■アラスカ以上に美しい?
ユーコン準州に入り、ホワイトホースの町で泊まると、オーロラに遭遇した。
「超ラッキーで、ぼくの誕生日だったんですよ。緯度が高いので、日が沈むのがものすごく遅い。日没は夜10時ごろ。その日のオーロラ予報は60%の確率だった。ダメもとで、目覚まし時計をセットして、夜中に起きて外に出た」
目が慣れまではよくわからなかったが、徐々にオーロラが東から西の空にかけて光の帯のように伸びているのが見えた。
「しばらくすると、オーロラの光が強くなってきたので、カメラを三脚にセットして撮影した。夜中でしたが、西の雲はまだオレンジ色に染まっていました」
そこから南下し、再びブリティッシュコロンビア州に入り、タットシェンシー=アルセック州立公園を訪れた。
「それほど大きな州立公園ではありませんが、そこは異次元な美しさでした。もう本当に別世界というか。ツンドラと山が広がっていて、そこに海からの霧が流れてくる。湖には白鳥がいて、緑の原野に紫の花が咲いていた。アラスカが美しいといっても、これを超えられないでしょう、と感じるくらい。デナリに期待しすぎて大丈夫なんだろうか、と思いながら、また北を目指しました」
果たして、憧れのデナリはどんな場所だったのか。尋ねると、そこは核心部分なので、ぜひ3月10日から富士フイルムフォトサロン(東京・六本木)で開催する写真展「Roads to Denali-デナリへの道」を見に来てほしいと言う。
■コロナになって旅を考えた
野辺地さんはデナリへの旅を、こう振り返る。
「日本よりもひと足先にコロナ明けとなった国々で、どこへ行こうかと、考えたとき、自分が知るべきところ、行くべきところを選んだ、という気がします。世界に旅立つのもいいけど、自分のバックヤード(裏庭)も本当に捨てたもんじゃない、と思いました。素晴らしい光景を見たり、撮影できた。すごくいい体験をしました」
さらに野辺地さんは「コロナになっていろいろと考えるようになりました」と、しみじみ語った。
「この3年間、私たちは本当に旅をしなくなったというか、家にとどまることに慣れてしまい、旅に出ることをやめてしまった人が結構いると思うんです。この写真展を見たことをきっかけに、隣町でもいいので、旅に出たいと感じていただければいいな、と思います」
(アサヒカメラ・米倉昭仁)
【MEMO】野辺地ジョージ写真展「Roads to Denali-デナリへの道」
富士フイルムフォトサロン(東京・六本木) 3月10日~3月23日