「生徒の茶髪や金髪を黒くしてほしいという要望や、口紅やマニキュアの修整ですね。手にしているスマホやペットボトルも消すとか。要するに校則に違反する部分を修整するわけです」
修整を施すのは何も生徒だけじゃない。先生も、だ。
「先生方からも髪の毛の寝ぐせを直してほしいとか、あります。なかには、『若返らせてほしい』という要望もあって、肌や髪を調整することもあります」
ちなみに幼稚園の卒園アルバムでは、以前は下着が見えていても問題視されなかった。
「しかし、近年は気を使わなければならない項目になっています。なので、ほぼ確実に修整します。その際はスカートなど、服を伸ばして隠すことが多い。影のようにして見えなくする場合もあります」
生徒名簿に「正の字」の苦行
卒業アルバムには運動会や文化祭、修学旅行など、学校行事の写真も掲載される。
「同行したカメラマンに『かわいく、かっこよく撮ってね!』という生徒もいますが、カメラを向けると、さっと避ける子もごく普通にいます。卒業アルバムにはできるだけどの生徒も均等に掲載してあげたいので、カメラが苦手な子はあまり意識されないように自然なところを撮影するようにしています」
驚いたのは、これらの写真を選別する際、そこに写っている生徒一人ひとりを数えて、どの子の数も均等になるように掲載する写真を調整することだ。
「保護者から『うちの子がぜんぜん写っていないじゃないか』と、クレームをつけられた経験のある学校や、カメラマンを派遣した写真館は相当気を使います。この作業は生徒の顔を知っている先生方が行うことが多いのですが、名簿に『正の字』を書いてチェックしていく、という話も聞きました。かなり神経と労力、時間を費やす作業だとうかがっています」
大島さんの話に「ブラック教職」の一端を見た思いがした。
「そこで最近、『正の字』を書く代わりに導入が広まっているのが顔認証システムです」