グローバル教育で際立っているのが、05年に東京都に初めて設置された白鴎だ。19年に文部科学省から、グローバル人材育成を目的に新設されたWWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアム構築支援の共同実施校に指定された。善本久子校長が刷新したのは、海外修学旅行や研修の内容だ。豪州への語学研修は「語学習得なら日本でもできる」と、「STEAM(サイエンス・テクノロジー・エンジニアリング・アート・マスマティクス)」教育体験へと舵を切った。

「豪州はSTEAMの先進国。日本の教育の弱点は、いま行っている勉強が将来どのように役立つか実感できないこと。ですが、STEAMなら学びが実践に結びつきます」(善本校長)

 中3次に実施される修学旅行は米国のスタンフォード大学を、高校2年次にはシンガポール大学を訪れる。20年の3月には、フランスの姉妹校を訪問し、日本文化をプレゼンする予定。さらに中国の高校との姉妹校協定を進めている。19年から独、仏、中、西の4カ国語を、中2、中3は選択必修、高校は選択科目として導入。いずれは、現地の言葉で会話することが目標だ。

 高校1年の井上愛子さんは、夏休みに豪州のSTEAM研修に参加した。高校では化学の実験やカエルの解剖、大学ではドローンを飛ばしたり、橋の模型を作って強度を計算したり、工場を見学したりしたという。

「豪州では主体的な学びが主で、日本とは違うことを実感しました。生徒が積極的で、発言も多かったですね」と井上さん。語学力を磨いて、日本文化を海外に紹介し世界と繋がるような仕事をしたいと意気込む。

 トライアルで進めているのが、英語以外の科目を英語で学ぶ「CLIL(クリル)」の授業。日本人教員とネイティブ講師が協力して行っており、来年度からは全教科に広げる。善本校長は期待を込めて話す。

「たとえば国語なら、故ドナルド・キーン博士が訳した英訳の源氏物語と日本語を読み比べてみたり、理科は外国と日本の教科書を比較したりすることなどを検討している。言葉が違うと学びがどのように変わるのか、考える機会にしていきたい」

 教科横断型の授業を実践しているのが、相模原中等教育学校(神奈川県)だ。国語でつくった歌詞に音楽で曲を付けたり、英語で習った歴史を社会の資料で調べて発表するなど、教員が工夫を凝らしている。

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高校では100分授業に