センター試験は31年の歴史を積み上げてきた。続く共通テストが揺れるなか、徹底してきた「公平・公正」について、大塚雄作・前大学入試センター副所長がAERA 2020年1月27日号に語った。
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1990年から始まった大学入試センター試験が31年の歴史に区切りをつけます。私は2015年から18年3月まで、その試験問題作成を統括する試験・研究統括官を務めましたが、31年間に積み上げられたノウハウは「文化資産」といってよいと思います。その中核にあるのは「公平・公正」の実現です。
昨年、大学入学共通テストの英語の民間試験と国語・数学の記述式問題の導入が見送られました。民間委託の記述式の採点では「採点ミスをゼロにできるか」に焦点が当たりました。実は、マークシートもまるっきり機械任せでなく、ゼロに近づける努力がなされています。受験生が塗るマークの濃淡や消し方によって、機械で十分に読み取れなかったり、ダブルマークと判定されたりするケースがあります。このため必ず2度読みをし、2度の結果が合わない場合は職員が目で確認をします。0.1%くらいの率ですが、それでも50万人規模となると数千枚単位の作業になります。
英語のリスニング試験で2回読みしてきたのも、日常の雑音で聞き取れないケースに備えた配慮もあってのことです。さらに追・再試験のほか、大雪や地震などの災害や、試験問題を運ぶトラックの事故による問題の漏洩といった緊急事態に備え、予備の試験問題一式も用意してきました。コストと労力がかかりますが、リスクマネジメントとしてやってきています。
約50万人の受験生は多様で、配慮の必要な受験生への対応もさまざまです。点字問題を作成したり、別室で問題を読み上げたり、マークのできない生徒は解答欄へのチェックを職員がマークし直したり、きめ細かく対応しています。
「公平・公正」をこれほど徹底してきたのは、だれもが持てる実力を等しく発揮できる環境を守り、チャンスの道が開かれることを大事に考えてきたからです。