「ドラッグストアなどで買った薬や湿布も領収書を。ネット通販で買って領収書がない場合は、納品書や明細書を保存。通院に関しては年末までに送られてくる『医療費のお知らせ』でもOKです」(同)
家族の中で一番高収入な人、つまり所得税をたくさん払っている人が家族全員分を申告するのもポイントだ。還付金の上限は申告者がその年に支払った所得税なので、“税金が戻る枠”は広いほうがいい。
冒頭の37歳会社員の男性が、体験談として付け加える。
「我が家は子どもがしょっちゅう風邪をひくので市販薬も欠かせませんし、義母は足腰が弱いため湿布やコルセットを多く購入しています。自分自身もデスクワーク続きで腰痛がひどく、週末に接骨院で治療としてのマッサージを受けていますが、『医療費控除で使うので』と領収書をもらっています」
通常の医療費控除では10万円以下の場合、「医療費控除の特例(セルフメディケーション税制)」を選んでもいい。医療用からドラッグストアで買えるように転換された「スイッチOTC医薬品」を年間1万2千円以上買うと控除される。風邪薬やビタミン剤、塗り薬など1700種類以上が対象だ。
会社員ならではの確定申告として「特定支出控除」も見逃せない。会社で支給されない衣服代や交際費などを対象にした控除だ。単身赴任中に自宅に帰る交通費もOK。18年は1704人が申告した。
「特定支出控除の申告の適用ベスト3は資格取得費、研修費、帰宅旅費です。申告前に所定の書類を勤務先に出し、捺印してもらいましょう」(西原さん)
■還付申告は年明けすぐ
意外に知られていないが、税金が戻ってくる還付申告に関しては年明け(20年分は1月6日)から申告書を受け付けてくれる。年末年始に準備してポストに投函しておけば、1月下旬から2月上旬には還付金が振り込まれるだろう。
昨年から、国税庁は機能制限付きながらスマホ申告にも対応。事前に手続きをしておけばパソコンからのデータ送信ですべての申告が終わる「e‐Tax」も利用者が増加中だ。
20年から会社員の所得税が実質アップする税制に切り替わる。特に年収850万円超の人が負担増となる。国民の義務を果たしつつ、無駄な税金は取り戻す姿勢で増税に勝ちたい。(ジャーナリスト・向井翔太、編集部・中島晶子)
※AERA 2019年12月16日号
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