片山英治(かたやま・えいじ)/金融公共公益法人部法人ソリューション課所属。NPO大学経営協会の財務委員会委員を務める(写真/野村証券提供)
片山英治(かたやま・えいじ)/金融公共公益法人部法人ソリューション課所属。NPO大学経営協会の財務委員会委員を務める(写真/野村証券提供)

 重要性が増す大学の資産運用。その実態を、約20年にわたり大学経営の調査にかかわっている野村証券の片山英治主任研究員(52)に聞いた。AERA 2019年10月21日号に掲載された記事を紹介する。

 日本私立学校振興・共済事業団(東京)の調査によると、高専と短大を含めた国内652の学校法人が保有する「運用対象資産」の合計は2017年度末で8兆3806億円で、前年度末より1259億円増加している。164法人が100億~500億円、40法人が500億円以上を保有していた。全体の運用対象資産の構成をみてみると、最も多いのが現預金で46.4%だ。債券の43.8%と合わせると全体の9割を占める。株は2%、投資信託は5.3%。

「偶然ですが、日本の家計の金融資産の構成と似ています。預金の占める割合が米国に比べると高いです」(片山さん)

 運用益の使い道は、給付型奨学金や研究者の研究費などが想定されているケースが多い。片山さんは「運用は大学の本業ではないことから、例えば学生支援のためであるというように明確に位置づけて、学内外に説得力を持って説明できるようにする必要がある」と指摘する。

 そもそも、なぜ資産運用が必要なのか。片山さんは、財務戦略上で留意すべき大学の特性の一つとして、18歳人口が減少して「永続性」が危ぶまれる状況にあることを挙げる。毎年の収入が減るのに備え、手元のお金を運用で増やす必要があるというわけだ。

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