申し入れが成績の評価に関する不満だと感じたため、配慮したうえでの提案だった。ただ、学生は予想と違う反応を示した。

「それはやめてもらえませんか」

 出来の良い学生がいい点を取ることになるから、自分にメリットはないと感じたようだ。さらによく話を聞くと、本心とみられる言葉も出てきた。

「授業に出てこないのにテストで良い点を取って、いい成績を取る子がいるんです。ずるくないですか?」

 体中の力が抜ける思いがした。そんな発想をするのか、と。

「そういう学生が仮にいたとしても、事情があって授業に出られないだけかもしれないでしょう。ずるをしているのではなく、損をしながら頑張っているのかもしれないよ」

 准教授はこう諭してみたが、学生には伝わらなかった。それどころか、「出欠を取るのは当たり前だ」と、食い下がってくる。最後は納得しないまま、学生は立ち去った。

 心理カウンセラーで「インサイト・カウンセリング」(東京都)代表の大嶋信頼さんによると、相談に訪れる人の多くは「他人の得が絶対に許せない」「いつも自分が損ばかりしている」という気分になっているという。そんな気持ちに苦しむ人たちが、この社会にあふれ返っているようだ。

 大嶋さんは特に、そういう人たちが他者に攻撃的な言動をとってしまうケースは「『ルサンチマン』という言葉で説明がつく」という。

 ルサンチマンとは、「強者に対する弱者のねたみや恨み」という意味だ。准教授が経験した例では、授業をきちんと受けながらも成績が心配される学生が弱者で、授業を受けなくても成績が良い方が強者と言えるだろう。大嶋さんは「多くのケースで、『弱者がすることは正しい』と思い込んでしまう傾向があります」とも指摘する。

●子ども使ってスターと写真、母にも子にも腹が立つ

「あの人がずるい」。そんな感情から、楽しいはずの思い出を素直にそう振り返ることができなくなってしまった東京都内の女性(45)も9月、話を聞かせてくれた。

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