天災による停電と言えば、約295万世帯が停電した昨秋の北海道地震が記憶に新しいが、今回は原因が異なる。北海道地震では、地震により火力発電所が緊急停止し、電力の需給バランスが崩れたことが大規模停電につながった。いわば血液を送り出す「心臓」の不具合だ。それに対し今回は、利用者に近い場所にある電線などの送電設備が壊れたのが原因。いわば手足などの「血管」のトラブルだ。
停電は、台風の上陸から2週間以上が経った27日になっても完全復旧していない。なぜこんなに長引くのか。東京電力パワーグリッドの13日の会見では、記者からこんな質問が飛んだ。
「1980~90年代は送配電設備への投資額が8千億円や9千億円で、この数年は2千~3千億円に減っている。設備投資額を減らしたことが今回の被害の原因なのか」
東京電力管内の鉄塔の平均使用年数は42年。倒壊した鉄塔はいずれも72年に建設されたものだったことから、送電設備の老朽化を問う声があった。
しかし、東京電力パワーグリッドは会見で「鉄塔については100年以上使用して健全なものもある。例えば、塗装をすることで腐食を抑制し、寿命を延ばすことにつながる。今回の鉄塔についても設備診断では問題がなかったもの」と説明した。本誌が改めてただすと、広報部を通してこう回答があった。
「点検結果に基づいて、送電設備の保全や更新をしており、老朽化により倒壊を増やしたという指摘はあたりません」
また、設備投資額が減っていることについては、
「過去は、電力需要が伸び、新たな発電所なども建設していた。現在は電力需要の伸びが鈍化し、新規の設備投資がない分、過去と比べて減っている」
(フリーランス記者・澤田晃宏)
※AERA 2019年10月7日号より抜粋