ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
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 経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。

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 セ・リーグのペナント争いで我がカープは3位に留まることができるか否かギリギリの戦いを続けており、まさに「昔のカープ」の風情に戻った感があります。

 今年はとにかく2年連続MVP、セ・リーグ出塁率ナンバー1(久々に王貞治の記録に食いこんだ)の丸佳浩選手がFAで金満ジャイアンツに取られ(ただし本人は巨人ファンだった模様だ)、その後もとんでもない金銭攻勢で首位固めに走ったジャイアンツ。一方、丸の穴が最後まで埋まらず、看板のタナキクマルのタナにあたる田中広輔選手までけがで2軍落ちする始末でまるで飛車角落ちでシーズンを戦った感のあるカープ。

 若い選手も例によって出てくるのですが、どちらかというと来年楽しみね、というタイプばかりで、今年を乗り切るハードボイルドな戦力はついに戻ってきませんでした。2番菊池、4番鈴木くらいが固定メンバーであとは日替わり戦力。これでは勝てるはずもありません。野球はやはり金で勝利を買うスポーツなのか……と言われれば今のところ、Not the everything but partly yes.というしかないでしょうね。

 我々のような50年来のカープファンは慣れたものですが、最近ファンになられた方は憤懣やるかたなく、ここ広島でもフラストレーションがたまっているようです。我々はCSを飛び越えてすでに来年の戦力論議に忙しく、広島中のメディア、おじさんを中心におばあさんから小学生まで、まさに老若男女、町中でああだこうだ、と議論が始まるのがまた広島なのであります。若者と老人のコミュニケーションの断絶が問題視される都市経営問題で、100万都市広島はすべての世代がカープを中心にコミュニケーションができるというすごい一体感を持っているんです。

 時々広島の老人ホームでボランティアをさせてもらうのですが、東京生まれ東京育ちのワタクシがいきなり80代の、特におばあさんの話し相手をするのは「東京では」かなり難しい。共通の話題を見つけ出すだけでお互い疲弊してしまうわけですね。肉体的な労力は別にして、これじゃ基本的にボランティアにならんわけです。共通の歌も歌えなければ、共通の小説の話もできない。59歳の私とはギャップは少ない方だと思いますが、それでも苦労します。

 が!! ここ広島では全く苦労しないのですよ。先週も82歳のおばあさんとニューカープ打線を考え出し、おばあさんの考えるベストメンバーとどっちが強いかを議論するだけで3時間がたってしまう。ほかのメンバーも参加しわいわい始まってしまったらもう収拾がつきません(笑)。この年齢を超えた団結力の中心にカープがある……広島はすごい町です。

AERA 2019年9月16日号