それからもう一つは観光インフラの問題でしょう。フランスは超一流のホテルからペンションまでありとあらゆる宿泊施設があり、何せお金を使う所には事欠きません。1人あたりの消費額も圧倒的に大きくなるわけです。それに比べるとドイツは全体的に質素で、お金を使う所がない。私もドイツワインが好きなので、しばしば訪れるのですが、フランスの半分くらいしかお金を使いません。

 アジアの観光大国はタイです。観光客1人あたりの消費量はダントツ。爆買いとか言っている日本の比ではありません。日本との大きな差が出るのは、これはどう見ても宿泊施設でしょう。タイには1泊10万円以上するような超高級リゾートホテルがたくさんあり、世界中の金持ちが集まるという図式が出来上がっています。当然そういうリゾートホテルに長期滞在する訳ですから使うお金もけた違い。タイは食べ物も大変おいしいのですが、価格自体は非常に安く、やはりこの滞在による集客に成功した例と考えるべきでしょう。

 と見てみると、日本はフランスとタイを両方凌駕できる要素があることがわかります。食べ物はおいしいし、歴史的文化遺産も豊富、風景も素晴らしいとなって、唯一欠けるのが1泊10万円以上する宿泊施設です。この話は前にも書いたのですが、あとはこの宿泊というインフラさえ整えれば、日本は世界一の観光地になる要素に満ち満ちているのですが……。

AERA 2019年9月2日号

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