

多くの人が先入観を持っているように、ひきこもりは「甘え」で「怠け者」なのか。取材を進めて 見えてきたのは、絶望感や焦燥感、孤独感に苛まれる当事者の姿だ。彼らの心の声を聞いた。
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この先の私の未来は明るいのだろうか。
都内の湊うさみんさん(30代)は、葛藤を胸に抱え一日を送る。8年近く自宅にひきこもっている。専門学校卒業後、小説家を目指したがうまくいかず、就職活動を始めたが100社以上落ちた。向精神薬を200錠以上飲み自殺を図ったが、未遂に終わった。自分は何をやってもダメだ──。自信をなくし、ひきこもり状態になった。
寝るのは深夜2時か3時、目を覚ますのは午後1時ごろ。起きていると嫌なことを考えてしまいがちなので、目が覚めてもしばらくは布団の中でごろごろすることが多い。昼食を取ると19時ごろまでパソコンでゲームをして過ごし、夕食後、再びゲームをする。疲れてきたらベッドに寝転び、図書館で借りてきた本を読む。週に2日ほどは、 精神科や図書館に足を運び、スーパーやコンビニに食料を買い出しに行く。
多くの人から見れば、楽をしているように見えるかもしれない。だが、湊さんの心の中で繰り返されるのは、自問自答だ。
「こんなことをしていていいのか」「もっと有意義なことをしなくては」「でも何をすればいいのか」。考えても答えは出ない。
自分を「怠けている」と思っている60代の両親とは冷戦状態にある。特に父親とは6年近くまともに口をきいていない。仕事も家族ともうまくいかず、この人生をすべて無にできる魔法があるとすれば、「自殺」しかない。死を選ぶか選ばないか──。葛藤し、毎日こう思う。
「生きていてつらいだけなら、未来なんていらない」
ひきこもりは、国の定義では「仕事などの社会参加を避けて家にいる状態が半年以上続くこと」をいう。従来、ひきこもりは若者の問題とされてきたが、全世代の問題とわかってきた。内閣府が今年3月に発表した調査結果で、40~64歳のひきこもりは推計61万3千人。ひきこもり当事者たちもまた8050問題の困難に直面している。