対立する日本と韓国をめぐる状況[AERA 2019年8月26日号より、写真:(c)朝日新聞社)]
対立する日本と韓国をめぐる状況[AERA 2019年8月26日号より、写真:(c)朝日新聞社)]
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 韓国向けの輸出規制に伴い、日本と韓国の対立が一段と激化している。ここまでこじれた原因は、「司法の尊重」にこだわった文政権側にあるが、安倍政権も喧嘩の仕方を間違えた。

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「韓国には日韓請求権協定をはじめ、国と国との関係の根本に関わる約束をまずはきちんと守ってほしい」

 安倍晋三首相は6日、広島市での記者会見でこう語った。これは4日前、韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領が発信した対日メッセージへの返答だった。日本企業に賠償を求めた昨年の徴用工訴訟判決について、日本が支払わなくてもよい措置を韓国政府が取らない限り、首脳会談には応じないという意味が込められていた。

 文氏は2日、安倍政権が輸出手続きを簡略化できる「ホワイト国」のリストから韓国を外す政令改正を決めたことに激しく反発。「加害者の日本が、盗っ人たけだけしく、大きな声で騒ぐ状況は絶対に座視しない」と非難していた。文氏が言いたかったのは、「徴用工訴訟問題を引き起こしたくせに、経済報復に踏み切ったのはけしからん」ということなのだろう。

 日韓関係が出口のない泥沼にはまった構図を考えると、元々の原因は文氏にある。

 文氏は「司法の尊重」にこだわり、「判決は1965年の日韓請求権協定を破壊する」として、重ねて協議を求めた日本側の訴えに全く耳を貸さなかった。日本政府関係者は「司法の尊重というなら、正反対の結論を出した日本の最高裁の判断はどうなるのか」と憤る。

 文政権は2017年5月の発足以降、日韓慰安婦合意を破棄し、自衛艦旗(旭日(きょくじつ)旗)掲揚問題や海上自衛隊機へのレーダー照射問題でも、ことごとく韓国側の主張を通し、日本への配慮はなかった。

 今回、日本世論の大半が、安倍政権の取った措置を支持している背景には、たまりにたまった文政権への不満があることは間違いない。

 ただし、安倍政権は喧嘩の仕方を間違えた。

 政府は7月1日、韓国向けの半導体素材3品目の輸出規制強化措置を発表した。韓国の主力産業に大きな打撃を与える措置だったことから、韓国内で日本製品の不買運動が起きるなど、日韓関係は一気に緊張した。

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