姜尚中(カン・サンジュン)/1950年熊本市生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了後、東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授などを経て、現在東京大学名誉教授・熊本県立劇場館長兼理事長。専攻は政治学、政治思想史。テレビ・新聞・雑誌などで幅広く活躍
姜尚中(カン・サンジュン)/1950年熊本市生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了後、東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授などを経て、現在東京大学名誉教授・熊本県立劇場館長兼理事長。専攻は政治学、政治思想史。テレビ・新聞・雑誌などで幅広く活躍
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文在寅韓国大統領(c)朝日新聞社
文在寅韓国大統領(c)朝日新聞社

 政治学者の姜尚中さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、政治学的視点からアプローチします。

【写真】文在寅韓国大統領

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 日韓の対立が新しい段階へと進み、非常に捻れた状態になる可能性が出てきました。このコラムの締め切りは8月1日なのですが、2日にも韓国をホワイト国から完全に除外することが閣議決定され、早ければ8月下旬にも執行される可能性があります。

 それを見越して日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA、ジーソミア)を破棄すべきだという考えが韓国野党から出てきています。今後、さらに強い日本への反発が広がると、韓国がGSOMIAの自動延長破棄という手段に出る可能性もゼロではなくなってきました。

 奇しくも、8月24日は1年ごとに期限を迎えるGSOMIAの更新期限日ですが、韓国側が破棄の通告をした場合、日韓の対立は違うレベルに突入してしまいます。

 そもそもGSOMIAとは、日韓両政府が防衛情報を共有する基礎となる協定です。日韓の間に防衛当局者同士の情報交換がなくなってしまった場合、拉致被害者の情報も含めて、北朝鮮に関する生の情報が日本に入らなくなる可能性があります。脱北者などを通じて、電子機器ではとらえきれない生の情報を韓国は持っています。GSOMIAが途絶すれば、これは日本にとって痛手です。

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