

「男の世界」と言われてきた古典芸能だが、女性の演者が切り開いてきた道のりは、分野によって異なる。落語、浪曲でそれぞれの道を極める女性たちの奮闘に迫った。
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男性と同じ境地を目指してきた能や女流義太夫の世界に比べ、女性である特性を生かそうとしている古典芸能もある。
若い世代にもすっかり人気が定着した落語でいえば、東西合わせて落語家は800人を超えるが、女性は1割に満たない。柳亭(りゅうてい)こみちさん(44)が所属する落語協会で子どもを持つ女性の真打ちは、こみちさん1人だ。
「最初は自分が女性であることを意識しないでやっていました。あるとき寄席で『品川心中』がかかった際、お囃子(はやし)のお姉さんが『女にこうさせた男が悪い』とつぶやいたのを聞いてハッとしたんです」
男性が語る古典落語の世界を認めながら、同じようにやるだけでは十分ではない、と気づかされた。
古典落語には男を誘惑し、だます女性が登場するが、こみちさんは「女性を悪者にしない」目線を心がけている。遊郭を舞台にした「お見立て」では花魁(おいらん)を主役に据えて彼女の言い分を語り、身請け話も、そうさせる男の側の問題にふれる。老婆の死神が登場する、こみちバージョンの「死神」も秀逸だ。
「真実は自分で探せ、と師匠に言われました。芸の道はあるようでないけれど、可能性なら無限にある。自分ならではの噺ができるよう精進していきます」