経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。
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韓国に対する輸出規制は日本が完全に方針転換をした、あるいはある一線を越えたことを意味します。
戦後の日本は戦争の反省に基づき、いかなる誹謗中傷を受けようとも、国連、WTOなどの国際協議機関には申し立てても、特定の国に制裁を加えるようなことはしてきませんでした。中国や韓国に対してもそうですし、クジラなんかで世界中から非難されても、不買運動なんて起こしたこともない国です。
つまり、日本という国は何を言われても何をされてもじっと耐える国だったと言ってもいいと思います。これを日本外交の弱腰、という人もいますが、私のように世界中でビジネスをしている人間の感覚からすると大分違います。戦争紛争に明け暮れるアラブ諸国やパレスチナなど、特に強国の圧力に常にさらされる発展途上国の人々はこの「報復しない国」をすごく高く評価してきました。国際史上こんな国はなかった、日本だけは安心して付き合っていい国だ、というわけですね。これはまさに「日本というブランド」なのです。
その意味からすると今回は戦後初めて、相手にこぶしを上げたということになるでしょう。国の方針転換はあり得るでしょうが、私が言いたいのはそれを受けた世論の反応です。NHKの調査によると今回のアクションについて「適切な対応だ」が45%、「不適切な対応だ」が9%、「どちらともいえない」が37%でした。なんと、不適切という答えは1割もない。