敵を見つけて叩き、国民の愛国心を煽る。選挙のためとも思わざるを得ない韓国への強硬姿勢や、討論会での議論をはぐらかす安倍首相の姿が「安倍のトランプ化」と揶揄されている。野党のみならず自民党のベテラン議員からも「情けない」と批判の声が上がる。
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7月3日。日本記者クラブで参院選に向け主要7党の代表による党首討論会が開かれた。そこで「原発の新増設」「選択的夫婦別姓」がテーマになった。
司会者が「原発の新増設を認めない方は挙手を」と7党首にたずねると、安倍首相だけが賛成の挙手をしなかった。続けて、司会者が「選択的夫婦別姓を認める方は挙手を」と続けると、今度も、安倍首相だけが賛成の挙手をしなかった。司会者がその真意を質すと、安倍首相はやや声を荒らげて言った。
「政策的な議論をしなければならない。政治はイエスかノーかではない」
「今の段階で答えられなくても直ちにノーではない。印象操作をするのはやめてほしい」
一瞬、会場に白けた空気が広がった。選択的夫婦別姓の議論については、ネット討論会でも、立憲民主党の枝野幸男代表から聞かれ、安倍首相は、
「いわば夫婦別姓の問題ではなくて、しっかりと経済を成長させ、みんなが活躍できる社会を作っていくことではないか」
と、質問をはぐらかした。司会者が「『選択的夫婦別姓はいらない』というご返答でよろしいでしょうか」と聞くと、
「いわば経済成長とは関わりがないというふうに考えています」
と、明言を避けた。
TBS「ニュース23」での党首討論では、司会を遮り持論を延々と語る場面もあった。
「選挙戦を前にちょっと刺激的な資料が出回っている」
そう言って司会の小川彩佳キャスターが持ち出したのは、「フェイク情報が蝕むニッポン トンデモ野党とメディアの非常識」という冊子。これは、自民党本部が参院選を前に党所属の国会議員に「演説用資料」として配布したものだ。野党の党首を醜く描いたイラストがずらりと並び、ネットに氾濫するデマ情報がオンパレードの内容だ。