自筆証書遺言を書いてみよう(AERA 2019年7月1日号より、イラスト:石山好宏)
自筆証書遺言を書いてみよう(AERA 2019年7月1日号より、イラスト:石山好宏)
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【弁護士】田上嘉一さん(41)/1978年、千葉県生まれ。早稲田大学大学院法学研究科修了。アンダーソン・毛利・友常法律事務所などを経て、2017年に弁護士ドットコム執行役員に就任(撮影/写真部・掛祥葉子)
【弁護士】田上嘉一さん(41)/1978年、千葉県生まれ。早稲田大学大学院法学研究科修了。アンダーソン・毛利・友常法律事務所などを経て、2017年に弁護士ドットコム執行役員に就任(撮影/写真部・掛祥葉子)

 働き盛りの40代。子どもの成長や親の介護など人生の新しいステージに入っていく年代。この時期をどう過ごすかで、人生後半戦が大きく変わってくる。階段の踊り場のように一度立ち止まって、自分の来し方行く末を考えてみたい。

*  *  *

 都内在住の50代の女性は、2016年に大学教員の夫(当時49)をがんで亡くした。余命1年、と宣告されてから8カ月だった。

 女性の夫は研究者らしく几帳面で、簡単な日録もつけていた。山のようにある蔵書以外はあまり物を持たず、常に整理整頓していた。

 しかし女性が一番苦慮したことが、パソコンのパスワードや銀行口座などの情報をどのように夫に尋ねるかということだった。夫婦共働きだったので、財布は別にしていたのだ。

病気になってしまうと、死期を待っているみたいでそういうことは聞き出せない。どうやって聞こうと考えるだけで一日が暮れる。それでタイミングを逸していました」

 働き盛りの40代でも、何が起こるかわからない。整理収納アドバイザーで『定年前にはじめる生前整理』などの著書もある古堅純子さん(48)はこう言う。

「生前整理は人生の後半にやることだと思われがちですが、50代になると親の生前整理に急を要することになり、自分のことが後回しになりがち。そして一段落して気づいた時には自分も老後に入っている。そのスパイラルに入る前、親の問題が大変になる前の40代のうちに、自分の生前整理をしておくべきです」

 早くやればやるほど、その後の人生を安心して余裕をもって過ごすことができ、不測の事態への対処もしやすくなるのが「生前整理」。その最たるものが、遺言書の作成だ。

 弁護士ドットコムの田上嘉一弁護士(41)は、「子どもがいない夫婦は特に遺言書を作っておくべきです」と言う。

「子どもがいない場合の夫婦の相続人は、配偶者と、故人の親が亡くなっている場合は故人の兄弟姉妹(兄弟姉妹が死亡している場合には、甥姪)。亡くなった配偶者に兄弟姉妹がたくさんいるときに、遺言書がなかったら遺産分割がとても大変になります」

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