低糖質ダイエット中の外食といえばステーキ屋で「ごはんいりません」、バーガー屋で「ナゲット山盛り」の時代は終わった。大手チェーンの低糖質メニューがここまで進化している。
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神奈川県在住、最近下っ腹の贅肉が気になり始めた会社員男性(37)。彼のお気に入りランチは、勤務先の敷地内にある牛丼チェーン、すき家の「牛丼ライト」である。
「お肉は大盛りで。社食は米ありき、麺ありきのメニューばかりなので“逃げ道”がなかったんですけど、これならおなかいっぱいになるのでお気に入り。お肉大盛りにする分、高くつきますけど(笑)」
ランチだけ糖質制限を行い、大好きなビールを低糖質のハイボールにしたら、1カ月で楽に3キロ痩せたという。かつての定番だったカロリー制限ダイエットと比べると圧倒的に“つらくない”のが低糖質ダイエットの魅力といえるだろう。
「糖質は、抜きすぎるのもよくありません。1食20~40グラム、おやつは10グラム以下、1日で70~130グラムに抑えれば大丈夫です。肉や魚などのたんぱく質や、油も好きなだけどうぞ」
と語るのは、北里大学北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟さんだ。実はこのお方、低糖質(ローカーボ)をロカボとネーミングして登録商標にした、ロカボの生みの親。おいしく楽しく食べて糖尿病治療になる食事療法を探し始めたのは2002年のことだという。
「きっかけは、私の糖尿病患者さんが喜寿の祝いを開いてもらった日におっしゃった一言でした。『家族はみんなフルコースを食べてるのに、私だけ鳥のエサみたいなワンプレートのカロリー制限食だったんだよ』。なぜ糖尿病だからといっておいしいものを食べられないんだ? いつもおなかを空かせていなければいけないんだ? 涙ながらに語る寂しそうな顔を見ていて医者としてどうにかしたい、と」(山田さん)
現代人は糖質の取りすぎでさまざまな生活習慣病を引き起こしており、メタボ予備軍・糖尿病が急増していることが最近の理解だ。08年に「DIRECT試験」という試験で、糖質制限食がカロリー制限食よりも血糖管理や高脂血症を改善できると発表されていた。以前言われていたカロリーの取りすぎが原因で生活習慣病が起こるという概念は誤りだったのだ。
ただ、当時、低糖質メニューは自炊で作るしかなかった。糖質控えめの菓子やパン、麺などを大手食品メーカーが作ってくれたら、生活習慣病が減るかもしれない。食品メーカーも売り上げが増えて喜ぶだろう。体重や健康を気にする消費者も低糖質でおいしいものが気軽に食べられてうれしい。一石三鳥!