「子連れ狼(おおかみ)」など数多くのヒット作を手がけた漫画原作者の小池一夫(本名・俵谷星舟=たわらや・せいしゅう)さんが17日、肺炎で死去した。享年82。小池さんの公式ツイッターで19日、発表された。
小池さんは1936年、秋田県生まれ。漫画「ゴルゴ13」で知られる「さいとう・プロダクション」で脚本を担当。漫画原作者として独立すると、「子連れ狼」が出世作となり、「弐十手物語」「修羅雪姫」などのヒット作を次々に生み出した。
私塾「小池一夫劇画村塾」では「うる星やつら」の高橋留美子さんや「北斗の拳」の原哲夫さんらを輩出。大学でも後進を育ててきた小池さんは、70歳を過ぎてツイッターを開始。表現の場をネット上に移して人気を博していた。その約90万のフォロワーに向けて、小池さんが亡くなったことが報告された。
週刊誌「AERA」では、2017年5月15日号で小池さんを取材。さまざまな表現活動を続ける小池さんに、「老い」をどのように受け止めているのか尋ねていた。ここでは、小池さんの言葉を再掲載する。
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僕は以前、路上で転んで骨折し、救急車で運ばれたことがあるんです。「救急隊員ってこんなに手際がいいんだな~」「救急車の中ってこうなってるんだ!」と感心しながら見ていて、あとで周りの人に「それどころじゃないでしょ!」と言われました。入院生活も驚きと発見の連続。ケガのことよりも、新しい知識の世界が開けていくほうが楽しい。
長い人生の中では、痛い、つらい、苦しいことはたくさんあるけれど、愚痴っても悲しんでもしょうがない。転んでもタダでは起きないのが楽しく生きる秘訣じゃないですか。
人は年を取るにつれて経年劣化し、老・病・死は等しく誰にも訪れる。確かにそれは感覚的には恐ろしいことです。
考えてみれば、人間は祝福されて生まれるけれど、その瞬間から死への運命も決まっている。死ぬこともまた、その祝福の中にあるんです。いつか訪れる死と、そこに向かって訪れる老いを「知性」を持って理解し受け入れることができるのは人間だけ。怖いという感覚に流されず死と老いを知性で受け入れられる人はカッコいいですよね。いつ死ぬかわからないと理解できるからこそ、いま目の前にある生を精一杯生きようと考えられる。感性に流されず、知性を磨くことが大事です。