デビューして以来、コメディーからシリアスな演技までさまざまな感情を自在に体現してきた。どんな役でもクリアする全方位的な演技力。その源は、日常生活にあるらしい。
窪田:日常生活のなかで、仕事をしていない時にどれだけ感情が揺さぶられるかが大事だと思っています。例えば、道を歩いていて今の季節なら桜を見てどう思うか。言葉にはしないんですけど、きれいだなでもなんでもいいんです。何かひとつ感情を持てたら。こう見てこう思った、という自分の素直な感想は頭の片隅に残しておきたい。そんな思いはずっとあります。町中で風変わりな人がいたら見ちゃいますよ。
役者・窪田が追い求めるものはリアリティー。役を生きることにこだわる。
窪田:演じるなかで、極力芝居をしたくないんです。芝居をしないなかで生きていたい。仕事は芝居をすることだけど、できるだけリアリティーに持っていけるようにする。役の動作だったり顔面の動きだったり、きめ細かく再現したいんです。人の話を聞いている時に、ずっと目を見ているとか動かないとかということはないですよね。相手が発する言葉で感情が動く。だから僕は、常に何か言われたことに関してはカウンター状態。打ち返す、ではないですが、そういう態勢にあるかもしれません。
もともと「人見知り」だと言う窪田が、演技を続けてこられたことは一緒にやってきたスタッフや監督の力が大きいという。
窪田:いい出会いをずっとさせてもらっていると思っています。今回、鈴木雅之監督のもとでやらせていただけることもそうです。僕は性格的に、人に対して斜に構えてしまうところがあるんです。でも、正面からぶつかってきてくれる人とは、長く付き合えるようになりました。そういう人が自分の周りに残ってくれて、自分がどれだけ斜に構えたとしても変わらず、真正面で話を受け止めてくれたり、話をしてくれたり。それが20代からずっと続いているので、自分もだんだん正面を向かなきゃいけないとか、向きたいなと思うようになってきました。内向きなところが次第に矯正されてきて、人と面と向かって喋れるようになっていったのが、昨年30歳を迎えてからだなと思っています。