京都の観光名物「保津川下り」で3月28日に起きた転覆事故。船頭1人が死亡、別の船頭1人が行方不明となっていたが、30日には事故現場の下流で人が見つかり、行方不明の船頭とみて身元の確認を進めている。400年の歴史がある川下りに何が起きたのか。20年近く、保津川下りの船頭をしていた男性に話を聞いた。
保津川下りは、京都府亀岡市から京都市の嵐山、渡月橋近くまでの16キロを2時間かけて運航する。
記者も子どものころから何度も乗ったことがある。3~5人の船頭が独特のさおと櫂(かい/水をかくオールのような道具)を巧みに操り、川幅の狭い急流でもうまく舟を運んでくれる。
大きなしぶきがあがり、スリル感を味わえたり、のんびりと川面や対岸の景色を楽しめたりもする。船頭の軽妙な語りも魅力の一つだ。
今回、事故が起きたのは、出発してから15~20分ほどでさしかかる「大高瀬」という場所だ。ゆったりした流れから、急に速くなる所で、名物ポイントの一つでもある。
舟には、子ども3人を含む乗客25人と船頭4人の計29人が乗っていたといい、全員が船外に投げ出された。乗客は、周囲の船に救助されたという。
20年ほど保津川下りの船頭をしていた男性はAERAdot.の取材に、
「乗っていた船頭の4人は、前に2人、真ん中に1人、後に1人。舟の一番後ろで舵を取るのがわかりやすくいえば船長で、船頭のまとめ役です。今回は後方の船頭が、空舵(からかじ)という状態になって川に落ちた。2人の船頭が後方に走り舟を安定させようとしたが、間に合わずに岩にぶつかり転覆してしまった。全員、ベテランで保津川下りを知り尽くしているメンバーです。どうしてこんなことになってしまったのか」
と残念そうに話した。
以下、男性との一問一答。
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――事故が起きた場所を動画などで見ると厳しい流れに見えますが?
「大高瀬は波はあるけど難所ではないと思う。たしかに、舟に水が入ってきて歓声が沸き上がるハイライト地点ではあります。前から2人目、舵をとる船頭も『これからです。青いシートを』とはやしたてて盛り上げます。動画でもそういうシーンがあるでしょう」