YouTubeはコミュニティガイドラインを改定し、不適切なチャンネルのアカウント凍結などを実施。昨年10~12月に削除されたチャンネルの8割超は「スパム、誤解を招く表現、詐欺」だった。自己都合(広告収入)しか考えていない情報発信者はスポンサー次第で主張が豹変するので、過去のコンテンツもチェックしよう(撮影/写真部・小黒冴夏)
YouTubeはコミュニティガイドラインを改定し、不適切なチャンネルのアカウント凍結などを実施。昨年10~12月に削除されたチャンネルの8割超は「スパム、誤解を招く表現、詐欺」だった。自己都合(広告収入)しか考えていない情報発信者はスポンサー次第で主張が豹変するので、過去のコンテンツもチェックしよう(撮影/写真部・小黒冴夏)

 彼らがおすすめすれば売れる、と企業からも注目されるネット上の有名人たち。だが専門家は、金のために偽情報を流す彼らの危うさに警鐘を鳴らす。

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 1月下旬、登録者数200万人を超える人気男性YouTuberのアカウントが凍結された。この男性は昨年末、「利回り84%の水耕栽培投資」を推奨する動画を投稿し、「詐欺ではないか」などと指摘され炎上。別の動画では、自身の月収が3千万円とも語っていた。

 彼はその後、別のアカウントで「何もないのになんで謝罪せなあかんねん」「(投資推奨は)台本じゃボケ」と開き直る動画を投稿(のちに謝罪)。ニュースなどで批判されたことについても、かえって注目が集まったと喜んでみせた。

 多くの視聴者や読者を持つYouTuberやブロガーは「インフルエンサー(影響力のある人)」とも呼ばれる。

 彼らの一部は、自身がいかに儲けているかをアピールし、「儲ける方法」などとうたった数千~数万円の情報商材を販売する。月額3千円程度のオンラインサロンを開いて会員を集める者もいる。前出の水耕栽培投資に警鐘を鳴らす有名ブロガーもいたが、実はその中には、人をけなしながら自身のブログで仮想通貨やソーシャルレンディング、FX自動売買といった投資を推奨し、スポンサーのサイトに誘導する者が多かった。

 このようなビジネスに金を出す人々は、ネットの世界で「情弱(情報弱者)」と揶揄される。批判され、炎上しても、注目を集めれば新たなカモとなる「情弱」が寄ってくるわけだ。ITジャーナリストの三上洋さんは裏の構図を説明する。

「インフルエンサーには高額ギャラのタイアップ広告案件が提示されがちで、彼らも躊躇なく引き受けています。個人のブログでおすすめされている企業やサービスのリンクには、必ずといっていいほどアフィリエイト広告が仕込まれています。あるサービスをベタ褒めしておけばそれをうのみにしてリンクを踏む人が増えていく」

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大西洋平

大西洋平

出版社勤務などを経て1995年に独立し、フリーのジャーナリストとして「AERA」「週刊ダイヤモンド」、「プレジデント」、などの一般雑誌で執筆中。識者・著名人や上場企業トップのインタビューも多数手掛け、金融・経済からエレクトロニクス、メカトロニクス、IT、エンタメ、再生可能エネルギー、さらには介護まで、幅広い領域で取材活動を行っている。

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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