福田晴一(ふくだ・はるかず)/昭和31(1956)年、東京都生まれ。みんなのコード学校教育支援部主任講師、元杉並区立天沼小学校校長。約40年の教員生活を経て、2018年4月NPO法人「みんなのコード」に入社。61歳で新入社員となる。2020年度からの小学校におけるプログラミング教育必修化に向け、指導教員を養成すべく、全国を東奔西走中福田晴一(ふくだ・はるかず)/昭和31(1956)年、東京都生まれ。みんなのコード学校教育支援部主任講師、元杉並区立天沼小学校校長。約40年の教員生活を経て、2018年4月NPO法人「みんなのコード」に入社。61歳で新入社員となる。2020年度からの小学校におけるプログラミング教育必修化に向け、指導教員を養成すべく、全国を東奔西走中
ゴミを放り投げるとゴミ箱が落下点を予測して拾いに走る。プログラミングを利用したユニークなこの作品は、第16回文化庁メディア芸術祭でエンターテインメント部門の優秀賞を受賞し、話題に 【動画はこちら】https://youtu.be/Jx_LnNG3Rv8>ゴミを放り投げるとゴミ箱が落下点を予測して拾いに走る。プログラミングを利用したユニークなこの作品は、第16回文化庁メディア芸術祭でエンターテインメント部門の優秀賞を受賞し、話題に 【動画はこちら】https://youtu.be/Jx_LnNG3Rv8
 61歳で公立小学校の校長を定年退職した福田晴一さんが「新入社員」として入社したのはIT業界だった! 転職のキーワードは「プログラミング教育」。今回は、福田さんが所属する「みんなのコード」で実施している、「プログラミング教員研修」の後半をお届けします。

【プログラミング教員研修で見てもらう動画はこちら】

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「プログラミング教員研修」の後半は、実際にプログラミング体験をしてもらう。

 まずは、コンピューターを使用しない「アンプラグド型」の体験である。「コンピューターを使用しないでプログラミング教育ができるの?」と思われる方もいると思うが、「そもそもコンピューターって何?」を子どもたちに考えさせるには有効だ。

 専用の絵本を活用しながら、登校してランドセルから荷物を机に入れて着席するまでの手順を考えたり、友だちを意図した場所に「前に進む、右に曲がる」などの命令で誘導したりして、体感的にコンピューターの「順序処理や繰り返し」「条件分岐」などの仕組みを理解する。すると、身の回りの信号機や自動販売機が「順序処理、繰り返し、条件分岐」で成り立っていることも分かり、その他、多くのものがコンピューターの働きで動いていることがリアルにわかってくる。

 先生たちにも、体を動かしながら実践してもらうと、笑いが起きたり、参加者全員の一体感が出てくる。

 次に、グループワークとして身の回りの生活に使用されているコンピューターを考え列記することで、我々の生活にはコンピューターが多く使われていることを知るとともに、コンピューターによって安心安全で豊かな生活になっていることを理解する。

 その他、どんなものがコンピューターにつながると便利かも考えてもらうために、動画も見てもらったりする。

 そのあとに、グルーブで話し合うと、盛りあがりは絶好調。日々の生活からさまざまなアイデアが出てくる。

 例えば、デジタル仏壇。扉を開くと故人の命日が表示され、来年は七回忌ですよ、などの案内が。盆にはお寺さんの予約をしましょう、のアナウンス。命日には、ホトグラムのような故人の写真や動画が投影される。高齢者の線香に火をつけるのはリスクがあるので、LEDと香料を合体した線香を出す。

 また、父親のネクタイをつけた1週間分の画像が映し出される洋服ダンス。毎日、ネクタイ選びに悩む父親の解決策。扉を開けると、当日の気温や湿度が表示され、数日前から着用しているネクタイとは別のネクタイを推奨するように、一週間の写真が映しだされる。

 そして、いよいよパソコン操作である。ここまで進むと先生方の姿勢は積極的になり、私は、研修会の終了時間を気にし始める。コンピュータでコンピューターの中のキャラクターを、自分の意図した動きができるように命令し、ブロックを並べたり、組み合わせたりして実現させる。

 一見ゲームに没頭しているようだが、頭の中では、順番を考えたり、組み合わせを変更したりして、かなりの思考が飛び交っていることを体験する。子どもたちがゲームに没頭する気持ちが理解される時である。

 最後に、学習指導要領に示されている、5年生の算数「正多角形」を模擬授業として展開する。プログラミングを活用することで、従来の教科指導で得た知識・理解が定着されたり、楽しく作図できることから関心意欲が高まったり、言葉には表さないが「外角」の概念から新しい考え方を広げたりと、正に「深い学び」が先生方に実感される。

 こんな流れの2時間半コース。

 終了時は、先生方の表情も柔らかく、笑顔で「何とか、なりそうですね」「これは、やらねばならぬと思った」とか「家に帰って、まずは息子にやらせてみよう」などのポジティブな声が多く聞かれる。

 でも、何と言っても嬉しい言葉は「いやぁ、楽しい研修でした」の一言だ。

 実は、この一言には大きな意味かある。参加された先生方が、自身の学級でプログラミングに取り組んで、学級の子どもたちに「先生、今日の授業、楽しかった」という再現イメージだ。

「授業が楽しかった」

 これこそ、小学校プログラミング教育の目指すところの「体験」であり、ある意味の「授業改善」である。