ウクライナ危機から5年を迎えるクリミアは今、どうなっているのか。そして、ロシアが武力でクリミアを併合した真相とは。駐日ロシア連邦特命全権大使のミハイル・ガルージン氏(58)が、アエラの単独インタビューに応じた。
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──3月18日で、ウクライナ領だったクリミアを編入して5年になりましたが、ウクライナや国際連合はこれを認めていない状況が続いています。
あたかもロシアが武力でクリミアを併合したように印象付ける、事実と異なる報道が西側のマスメディアで多くみられますが、それは誤報や虚報です。
2014年2月、ヤヌコビッチ大統領と国民統一政府を組閣するという合意文書を交わした野党勢力が、その翌日にネオナチ勢力の武装急進派を使って軍事クーデターを行い、政権を奪い取りました。彼らはウクライナ国内の800万人のロシア系住民に対してロシア語の禁止など弾圧政策を宣言し、武装グループが「クリミアからロシア系住民を一掃する」というスローガンでクリミアに入ろうとしました。
こういう野蛮な意図を持ったキエフの当局の意向を、クリミアやウクライナ東部の人たちは受け入れなかった。そして、彼らはクリミア自治共和国の独立宣言を採択して国民投票を行い、97%がウクライナからの独立とロシアへの統合に賛成しました。圧力や武力による威嚇なしに、平和的かつ民主的に、国際基準に合致した形で国民投票が行われたことを外国からの監視団が確認しています。
ひとつ比較しておきたいのは、コソボがセルビアからの独立宣言をしたときには国民投票すら行われていません。にもかかわらず、日本を含む国連加盟国の多くがコソボの独立を承認しています。
──クリミアでロシア軍の武力介入はなかったのですか。
当時、ウクライナとの正式な合意に従ってロシアの黒海艦隊が配備されており、確かにこの兵力を動員しました。しかしこれは、キエフで武力クーデターを起こし、クリミアに派遣された武装団の暴力から住民を守るための行動です。しかも、キエフでは大量の犠牲者があったのに対し、クリミアでは射撃一発もなく何ら武力衝突もありませんでした。