政党にしばられない大統領――。「ねじれ議会」では自身初となる一般教書演説で、トランプ米大統領は、「国民の大統領」を強調し、その下での「団結」を訴えた。自画自賛のトランプ節に議員の反応は分裂したが、それでも議場が「団結」した瞬間があった。キーワードは「女性の活躍」。最大の弱点である女性票の掘り起こしを狙うトランプ大統領の再選戦略がにじみ出た演説でもあった。
【白い服を着て、女性の連帯を示す民主党の女性議員たちはこちら】
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「USA! USA! USA!」
2月5日夜(日本時間同6日午前)、就任後2回目となるトランプ大統領の一般教書演説が行われた米連邦議会で、USAコールが鳴り響いた。大合唱の中で、握手をしたり、ハイタッチを見せたり、中には小躍りしながら歓喜する議員たちがいた。中継カメラの主役の座は、トランプ大統領ではなく彼女ら。
昨年11月の中間選挙で、過去最多となる女性の当選者を出した野党・民主党の下院議員たちだ。「女性の団結」を示すために、多くの議員が白いスーツを着て一般教書演説に出席していた。
大統領としての成果を過剰に強調する演説内容にあきあきした表情を見せていた民主党の女性議員らの多くが、いきなり歓喜したのにはわけがある。トランプ大統領が自身の雇用政策の成果の一環として演説に組み入れた、「女性の活躍」を強調する言葉に反応したからだ。
「今まで以上に多くの女性が職場にいることを、全ての米国民は誇りに思っている」
ひと通りの興奮が一段落して議席に座った女性議員たちに、「まだ座らないほうがいい。これからがいいところ」と笑顔で伝えたトランプ大統領が、さらに続ける。
「連邦議会が女性に投票権を認める憲法修正案を成立させてから100年の今、議会でも、より多くの女性が議員を務めている」
トランプ大統領の後方に座っていた民主党のナンシー・ペロシ下院議長が立ち上がり、両手を上下させて同僚の女性議員らに起立を促すと、議場は再びお祭り騒ぎとなった。そして沸き上がったのが、議場全体を包むUSAコールだった。
その様子を満足そうに眺めていたトランプ大統領がつぶやいた。