国内通信事業のソフトバンクを切り離し、投資専業の性格を強めたソフトバンクグループの孫正義会長兼社長。その目は世界の先端企業に向けられている (c)朝日新聞社
国内通信事業のソフトバンクを切り離し、投資専業の性格を強めたソフトバンクグループの孫正義会長兼社長。その目は世界の先端企業に向けられている (c)朝日新聞社
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ソフトバンクグループの概要(AERA 2019年1月28日号より)
ソフトバンクグループの概要(AERA 2019年1月28日号より)
ソフトバンク株価の推移(AERA 2019年1月28日号より)
ソフトバンク株価の推移(AERA 2019年1月28日号より)

 昨年12月に上場するも、株価の低迷が続いているソフトバンク。調達した約2.4兆円もの巨額資金を一体何に使うのか。ジャーナリスト・石川温氏が解説する。

【ソフトバンク株価の推移はこちら】

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 今回の上場で、ソフトバンクグループ(SBG)は保有するソフトバンク株の34%を売り出し、約2.4兆円を調達した。この巨額資金の使い道は、いよいよ5G時代を迎える国内の通信網整備──などではなく、新たな事業への出資だ。

 SBGは現在、本体と10兆円規模のソフトバンク・ビジョン・ファンドの両方で、世界の様々な業界トップ企業や有望企業に出資している。SBGの営業利益の約45%は投資事業が稼いでおり、投資が「本業」となりつつあった。通信事業を担うソフトバンクを切り出したことで、投資会社という性格がさらに鮮明になったと言える。

 これまでの出資先は中国の通販最大手アリババを筆頭に、半導体大手のエヌビディア(米国)やアーム(英国)、配車アプリのウーバー(米)、ディディ(中)、オラ(インド)、シェアオフィスのウィーワーク(米)、ロボットのボストンダイナミクス(米)など多岐にわたる。今回の上場で得た資金も、同様の出資に振り向けられるとみられている。

「思いつきでバラバラに出資しているように見えるが、一貫していることがひとつだけある」

 SBGの孫正義会長兼社長は18年8月6日の決算説明会でそう語った。今や世界を代表する投資家の一人となった孫氏が最も関心を持ち、投資活動の軸に置いているのが、AI(人工知能)だ。

 孫氏は同じ説明会で「AIを制するものが未来を制す」と断言。ここ最近はAIに強い企業に対して積極的に出資し、それらの企業を束ねる「AI群戦略」により、SBG全体の繁栄を目指している。

 孫氏は「グループ内でシナジーを促す。協力し合って新しい革命を起こす。1社で完結できるほど甘いものではない」と語る。

 孫氏が投資活動に傾斜していった背景にあるのは、国内通信事業の伸び悩みだ。

 ソフトバンクは、革新的な商品だったiPhoneの国内販売を独占することで急成長し、事業基盤を確立した。KDDIやドコモがiPhoneを扱うようになってからも、iPhoneはソフトバンクにとって「代名詞」とも言える商品だ。

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