一般的な高齢夫婦世帯の平均生活費をもとに老後の暮らしに必要なお金を試算すると、足りないお金が見えてきた
一般的な高齢夫婦世帯の平均生活費をもとに老後の暮らしに必要なお金を試算すると、足りないお金が見えてきた
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大槻奈那(おおつき・なな)/マネックス証券 執行役員 チーフ・アナリスト兼 マネックス・ユニバーシティ長。三井信託銀行(現三井住友信託銀行)、S&P・レーティング・ジャパン、UBS証券、メリルリンチ日本証券などを経て、2016年1月より現職(撮影/岸本絢)
大槻奈那(おおつき・なな)/マネックス証券 執行役員 チーフ・アナリスト兼 マネックス・ユニバーシティ長。三井信託銀行(現三井住友信託銀行)、S&P・レーティング・ジャパン、UBS証券、メリルリンチ日本証券などを経て、2016年1月より現職(撮影/岸本絢)

 老後のお金が足りない――これに関しては、さまざまな論が雑誌やネット上にあふれている。

「定年時に2000万円あれば大丈夫」「いや豊かな暮らしのためには3000万円必要」「それは会社員生活が長い厚生年金の人の話で、自営業者はもっと悲惨」……。具体的に、いくら足りなくなるのか? 

 ざっくりとでもいいから、知りたい人は多いはずだ。アエラ増刊『AERA with Money 毎月5000円でつみたて投資!』には、平均的な世帯で足りなくなるお金について「月単位」の金額が掲載されている。

 ベースとなる資料は、総務省統計局の「家計調査2017年 高齢夫婦無職世帯の家計収支」。高齢夫婦無職世帯とは、夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみで暮らしていて、二人とも定職についていない世帯のことをいう。

 この夫婦がもらえる年金(社会保障給付)は、毎月平均19万1880円、年金以外の収入が毎月平均1万7318円。これらを合わせると、収入の合計は20万9198円になる。

 では、出ていくお金は? やはり一番多いのは食費で、6万4444円。税金や社会保険料が2万8240円。住居費、水道光熱費、医療費、交通費などを合わせると、合計26万3717円。

 収入と支出の差額は5万4519円――つまり毎月約5万4000円足りなくなるというわけだ。あくまで「平均」の数字ではあるが、60歳以降、生きている間に毎月5万4000円をなんらかの仕事で稼ぎ続けるのは、やや厳しそうな気配もある。

 毎月5万4000円ということは、年間で64万8000円。60歳で定年して、80歳まで生きるとしたら1296万円、90歳まで生きるとしたら1944万円の不足。巷で記事になっている「最低2000万円必要」「3000万円は、ないと」の根拠はこのあたりの数字をもとに論じられているのだろう。(経済ジャーナリスト・伊藤雅浩)

※アエラ増刊『AERA with Money 毎月5000円でつみたて投資!』の記事に加筆・再構成