人種や思想、あらゆる分野での分断が露わになっている米国。そんな中、過激な思想も広がりを見せている。
【グラフ】都市部では民主党、地方では共和党への支持が強まっている?
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中間選挙の前に再び表面化したのが、白人至上主義だ。
10月、ペンシルベニア州のシナゴーグ(ユダヤ教の礼拝所)で白人の男(46)が銃を乱射し11人が殺された。男はSNSに「(ユダヤ人は)白人の敵だ」と、反ユダヤ主義的な書き込みを繰り返していたとされる。
「白人の権利を守る」ことを掲げる団体は少なくない。ある白人ナショナリスト団体の幹部は取材に対し、「トランプの勝利は、白人のナショナリズム運動を受け入れる余地があることを証明した」と歓迎し、「見捨てられた」と感じる白人に支持を広げるべく、アパラチアやラストベルトの貧困地帯で活動を強化する考えを示した。
背景には、白人とキリスト教徒が圧倒的な多数派だった時代から、アフリカや中南米、アジアからの移民流入で「米国が変質してしまった」との不満がある。45年には、米国の人口のうち白人は5割を切るとみられる。
最近の特徴は表舞台での彼らの活動が目立つことだ。
8月には首都のホワイトハウス前で集会を開いた。トランプ氏のスローガン、「メイク・アメリカ・グレイト・アゲイン」のロゴが入った赤い野球帽をかぶった参加者も複数いた。
主催者のジェイソン・ケスラー氏は壇上でこう訴えた。
「海外の人(非白人)が米国に入国してもよいが、あまりに多いと、同じ国ではなくなってしまう。18年と1960~70年代はまるで別の国だ」
「白人男性が頂点にいると言われるが、全ての白人が頂点にいるわけではない。見てくれ、私は白人だが裕福でないし、特権もない」
記者団から「なぜ公民権ではなく、『白人の』公民権を主張するのか」と問われると、ケスラー氏は「黒人やユダヤ人の運動があるのに、白人の運動がないからだ」と答えた。
ニューハンプシャー州の「崩壊した中流階級」出身という参加者のダニエルさん(28)は「米国には『反白人』運動が多すぎて、いま抵抗しないと手遅れになる」と危機感を語った。
米連邦捜査局(FBI)によると、17年に国内で報告されたヘイトクライム(憎悪犯罪)は、前年比で約17%増。米メディアによると、米同時多発テロが起きた01年に前年比で2割超増えて以来の増加幅だったという。(朝日新聞記者・金成隆一)
※AERA 2018年12月31日号-2019年1月7日合併号