これまではSNSやブログの更新も億劫(おっくう)で作品のPRにあまりネットを活用してこなかったのですが、鈴木さんに背中を押され、自分で積極的に発信する転機にしようと決意しました。

「note」での公開に際し、私はこんな文章をつづりました。

<ここが私の小さな本屋さん、よかったらお好きなだけ立ち読みにきてください>

 リアル書店が減り、本と出合うのが難しい時代です。大学の講義で学生に質問したり、美容室で雑談したりすると、ノンフィクションは遠い存在なんだなと実感させられます。書店でも目立たないところに置かれていると、「ノンフィクションがこんなに虐げられている世の中ってよくない!」って思うんです。今は不寛容な社会だといわれますが、ノンフィクションがもっと読まれる世の中なら、世界の見方や視野も広がるのに。「note」のユーザーは30代が中心だと聞きました。若い世代がノンフィクションに触れるきっかけになればとも思います。

「note」には11月16~30日の毎日午前7時に1章ずつ公開しました。うれしかったのは「朝読むと、その日一日やる気が出る」というSNSのコメントです。本作の主な登場人物である現代アートのスーパースター蔡國強(ツァイグオチャン)さん、「いわきのおっちゃん」こと志賀忠重さん、植村直己冒険賞を受賞した冒険家の大場満郎さんには共通の魅力があります。いずれもスケールの大きな夢を見て、それを実現してきた人たちです。

 この作品を読めば、みんなポジティブな力がわく。そんな自信をもってお薦めできる作品をオープンな形でまず読んでもらえたことに意義を感じています。(構成/編集部・渡辺豪)

AERA 2018年12月24日号

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