「被爆者が少なくなり、苦労はあります。それでも番組をやめてはいけないという共通認識が現場にはあります」

 志は受け継がれている。とはいえ被爆者の高齢化と減少で、新たな対応を迫られていることは確かだ。NBC記者時代、原爆取材の第一人者で、いまはフリーランスとして活動している関口達夫さん(68)は、「まだ伝えるべきことはある」と断言する。その一つが被爆2世の問題だ。若くして白血病などで亡くなったり、健康不安、差別などに苦しめられてきたりした。

「国は遺伝的影響がないという。しかし動物実験では証明されていて影響を否定できない。そうである以上、そのことを伝えていく必要があります」

 2世の団体「全国被爆二世団体連絡協議会」(二世協)は88年の結成以来、被爆者援護法に基づく援護を求めてきた。だが国は法の適用対象としていない。二世協は17年2月、適用を求めて集団訴訟に踏み切った。2世は現在全国に30万~50万人とみられているが、正確な数は不明だ。国は一度も実態調査をしていない。二世協は、15、17年とスイス・ジュネーブの国連欧州本部の人権理事会を訪問。18年春には、同本部での核拡散防止条約(NPT)再検討会議第2回準備会合に代表団5人を派遣した。メンバーの一人、崎山昇会長(60)は、現地で強く実感したことがある。

「2世自身が核の被害者だということです。これからは親の体験だけでなく2世の体験を訴え、核廃絶につなげていくことが重要だと自覚しました」

 同時に、核実験や原発事故など、世界の核被害者の次の世代の問題も併せて訴えていくことだと強調する。

 2世の最高齢者は72歳。いまは3世、4世も積極的に継承活動を始めている。その一人、長崎市の原田小鈴さん(44)。広島と長崎で「二重被爆」した山口彊(つとむ)さんの孫娘だ。学校や地域の学習会などで祖父の体験を話している。山口さんが10年に93歳で他界。長崎大学の教授から原田さんに3世としての話をと依頼されたのがきっかけだ。

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