リーマンサットの名前は、人工衛星を意味する「サット」と「サラリーマン」から。日本のサラリーマンが、本業でなくてもここまでできるんだと言いたかったという。左から、宮本さん、大谷さん、伊藤さん(撮影/ジャーナリスト・桐島瞬)
リーマンサットの名前は、人工衛星を意味する「サット」と「サラリーマン」から。日本のサラリーマンが、本業でなくてもここまでできるんだと言いたかったという。左から、宮本さん、大谷さん、伊藤さん(撮影/ジャーナリスト・桐島瞬)

 無人補給機「こうのとり」7号機が国際宇宙ステーション(ISS)へのドッキングに成功。そこには一般のサラリーマンが作った人工衛星が搭載されていた。

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 こうのとりを搭載したH2Bロケットは、4度の延期の末、9月23日に鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられ、その5日後にISSとドッキングした。積み込まれていたのは、ISSに滞在する宇宙飛行士の生活に必要な食品や生活用品など6.2トン。そのなかに、一風変わった人工衛星「RSP-00」が含まれていた。

 衛星はキューブサットと呼ばれるタイプで、10センチ四方、重さはわずか1.26キログラムという超小型。地球との通信や撮影機能を備えるほか、一般の人が短冊に書いた6千通の願い事も画像データ化し、マイクロSDカードに収めている。やがて衛星が宇宙空間で燃え尽きるとき、願い事が流れ星になるという洒落のきいたアイデアだ。

 作ったのは宇宙開発の専門家ではなく、一般のサラリーマンたちが集まった「リーマンサット・プロジェクト」。開発メンバーは87人で、2年前の夏ごろから趣味として製作に入った。

 ファウンダーの大谷和敬氏(36)は「始まりは新橋の居酒屋だった」と話す。

「ガード下の焼き鳥屋に仕事仲間や友人など、後にプロジェクト設立メンバーとなった5人が集まり、自分たちが宇宙開発をするとしたら何ができるかを話し合ったのが始まりです。宇宙にまったく関心のない人たちも交えて、人工衛星の作り方などを熱く話し合っていました」

 とはいえ、人工衛星など作ったことのない素人集団。大谷氏も、ソフトウェア開発企業の営業職だ。

「初めは人工衛星の作り方を書いた本を一人一冊ずつ買って読みましたが、それでも分からず、大学へ勉強に行ったりもしました」(大谷氏)

 そうしているうちにメンバーもやがて50人、100人と増えていき、宇宙開発を行う企業で働く人や、大学で専門に勉強する学生も参加し始めた。現在は350人で、7割が技術系。残り3割は営業、経営企画、マーケティング、広報など。中には教師、看護師、弁護士、医師、大工、高校生もいて後方部門としてプロジェクトを支える。メンバーの2割ほどは女性だ。これだけ様々な人材が揃うと、何か問題が発生してもメンバーのスキルで大体は解決してしまうという。

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