趣味だからといって開発に手を抜くことはしなかった。

「遠くから夜行バスで都内のミーティングに参加するメンバーもいますし、遠隔地のメンバーとはスカイプを使って設計を進めたことも。集まる場所がないときには、カラオケボックスを使って終電までやったこともあります」(技術班コンダクターの伊藤州一氏、48)

「締め切りまでの時間が押してしまい、最後は私の町工場にメンバーが集まり、3日ぐらい徹夜して作り上げました。本業よりもキツイとこぼした人もいました」(代表理事の宮本卓氏、40)

 開発費用はどうしたのか。宇宙航空研究開発機構(JAXA)に支払う衛星運搬費が300万円、電子基板や通信設備の購入費、振動、放射線などの試験費用を含んだ製作費に280万円。これらの費用は、メンバーからの寄付やクラウドファンディングで集めた。この中に人件費は含まれていない。スタートアップ企業で同じことをしたら「2億8千万円以上はかかる」(大谷氏)というから、格安で人工衛星を打ち上げたことになる。

 次号機の開発もすでに始まった。目標は衛星の自撮り。伸び縮みするアームの先にカメラを取り付け、地球をバックに写真撮影。そこから最適な画像を伝送するために、AI(人工知能)も取り入れる。

「企業から共同企画でやりませんかという提案も増えてきた。今後は衛星を作るノウハウの公開を含めて、継承できる宇宙開発を続けていきたい」(大谷氏)

(ジャーナリスト・桐島瞬)

AERA 2018年10月29日号