“シラフ”になった彼女に「キミはこんなことを言っていたよ」と言うと、「そんなことを言った覚えはない」と言う。どうすればいいのだ。
悲劇を助長したのは私の無理解だと思う。男兄弟→芸人社会(かなりホモソーシャル)というコースを辿って来た私には「生理」という現象がとても不可思議に見えた。私の「キョトン」とした態度に妻らもさぞやイライラしたことだろう。
自分の無理解が世間の無理解と地続きであることを考えるに、おそらく漠然とした「喜ばしいこと」という前提がある。男性も社会もこれを労わるべきなのは当然だが、「本質」がわからないまま「喜ばしい」もへったくれもない。我々が彼女たちにやっていることはトンチンカンなことなのである。現実と理想との間にある温度差ゆえそこには竜巻が起こっている。「生理は現場で起こっているんです!」を実感する。勉強するしかない。近頃発売された『生理ちゃん』なる本も買った。
ところで私は、どこかルナティックな存在に惹かれるきらいがある。例えば、聖子ちゃんより、明菜が好きなタイプだった。体内に住む魔物との格闘が彼女独特の歌世界を作ってきたように見える。妻の毎月の言動にやれやれと思いつつ、これが因果なのだろうと思っている。
※AERA 2018年8月27日号