教員免許には、運転免許と同じく有効期限がある。更新が必要だ。だが、実務経験などがないと、講習すら受けられない。いったいどうなる?
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東京都の会社員Aさん(31)は教員免許の更新講習を受けようと文部科学省のホームページを開き、愕然とした。自分に受講資格がないとわかったからだ。
教員免許は、2009年4月に施行された改正教育職員免許法によって、10年の有効期限が付けられるようになった。10年3月に大学を卒業し、同時に教員免許を得たAさんは、有効期限付きの「新免許」を持つ、いわば第1期生だ。10年経過後も免許を持ち続けるには、全国の大学などで開かれる更新講習を受け、修了する必要がある。できないと失効する。
しかし受講は、現職教員、過去に教員だった人、臨時任用のリストに名前が記載されている人などに限られる。免許はあれど実務経験がなく、教員になる予定もない、いわゆるペーパーティーチャーは対象外だ。14~16年度は各年度とも約22万件の免許状が授与された。過去には「免許取得者の8割がペーパーティーチャー」との推計もある。
ネットなどで騒ぎが広がった。
文科省教員免許企画室の担当者は、ペーパーティーチャーを対象外とした理由をこう話す。
「更新制の趣旨は、教員が最新の知識・技能を持って教壇に立ち続けられるようにすることです。教員免許を持つ人はとても多く、教壇に立つ予定がない人にまで門戸を広げると、本当に必要な現職の先生らが受講できなくなってしまう恐れがあるため、制限を設けています」
Aさんが持つ教員免許は、中学校の社会科など計5種類。来年度末にすべて失効するという。Aさんは現在、教員や学校現場とは関係のない職に就き、教員になる予定もない。
「それでも、大学で4年間かけて得た資格ですし、将来のイザというときの備えにもなると思っていました……」
教員免許が失効すると、資格も消えてしまうのか。