サプライズを連発するトランプ政権が、突然原子力協定の廃棄を宣告してくる可能性もないとは言えません。中国も日本の核燃料サイクル政策に疑いの目を向けつつあり、韓国も日米原子力協定並みの取り決めを度々、米国に迫っている経緯があります。

 世論で脱原発は叫ばれても、日米原子力協定の自動延長については議論が活発とは言えません。日米原子力協定こそが、そもそもの始まりであるにもかかわらず、です。

 結局、核エネルギーというものは平和目的か軍事目的かを問わずメカニズムは共通で、同じ物理現象をどちらに使うかという問題です。膨大なプルトニウムの余剰は、「その気になれば核の転用は可能という一つの牽制」と取られかねません。そうした疑念が、痛くもない腹を探るゲスの勘ぐりだと言うなら、余剰プルトニウムの削減について、もっと抜本的で実効性のある政策を内外に示さなければなりません。

AERA 2018年8月6日号

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姜尚中

姜尚中

姜尚中(カン・サンジュン)/1950年熊本市生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了後、東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授などを経て、現在東京大学名誉教授・熊本県立劇場館長兼理事長。専攻は政治学、政治思想史。テレビ・新聞・雑誌などで幅広く活躍

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