四半世紀もの低迷に苦しんだ国産ウイスキー。そこから脱して10年が過ぎたが、大好況で原酒不足に悩む状況が続く。ウイスキー人気は今後も続くのか。
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看板商品のひとつである「白州12年」と「響17年」を6月以降に販売休止にすることをサントリーが明らかにしたのは、今年5月のことだった。「終了」ではなく「休止」にしたのは、売れなくなったからではなく、需要に供給が追いつかなくなったからだ。休止には「再開」の可能性が含まれている。その理由をサントリーホールディングス(HD)広報部に問い合わせると、こんな返事が戻ってきた。
「お客様には大変ご迷惑をおかけします。ウイスキーは蒸留してすぐ出荷できるわけではなく、蒸留後に樽で寝かせるという工程が必要になります。白州12年は12年以上、響17年は17年以上寝かせた原酒を使っています。そのため原酒の供給量が需要に追いつかず、販売継続が困難な状況になってしまいました」
売れすぎが、「休止」の理由である。休止という非常事態は、大好況の裏返しなのだ。
「日本のウイスキーは1983年をピークに、焼酎ブームに押されて低迷し、四半世紀も不遇の時代を過ごしてきました。その間にも、いろいろ市場活性化策を仕掛けましたが、いずれも不発でした」
と言うのは、サントリーHD傘下でウイスキーを手掛けるサントリースピリッツのウイスキー部長、鳥井憲護である。その不遇の時代に終止符を打ったのがサントリーだった。
「それまで私たちは、5千円以上の製品を売ることに力を注いでいました。私たちにも、飲食店にしても粗利がいいからです。そんななか、2006年ごろ、『角瓶があるじゃないか』と営業が再認識するようになったんです。5千円以上だと簡単に手は出せないが、1千円ちょっとの角瓶なら消費者も手に取りやすい」
ただ安さを強調するだけではダメで、消費者の関心を惹くには飲み方の提案が重要になってくる。そこで営業の若手が提案してきたのが、ジョッキで飲む「角ハイボール」だった。酎ハイによって焼酎が市場に浸透していったことも参考になっていたはずだ。