20代のプロデューサー、30代の監督が仕切る現場は、明るく自由だという。春田はメロンソーダで牧はアイスコーヒー。春田はリュックで牧はトートバッグ。そんなアイデアが自然にスタッフから生まれ、時に新しいシーンが加わることもある。例えば6話の最後、牧が号泣する。それは第2話の林遣都の目の演技が「あまりに凄すぎた」ので、「牧に号泣させるシーンを」と貴島が脚本家に提案したものだ。

 想定外だったのは春田も泣いたこと。台本に春田の涙はなかったが、林遣都に田中圭が呼応した。

 貴島自身は涙をこらえていたが、カットがかかった瞬間から監督をはじめ、スタッフがみな鼻をすすり始めた。「かわいそうすぎる」と。牧と春田の別れに、誰もが泣かずにはいられなかったのだ。ジェンダーを超えて共感できる普遍を、若い世代が物語として見せてくれた。それは、少し窮屈な社会で一つの希望のように見える。

 最近、視聴者センターに70代の女性から「毎週楽しみにしています」と声が届いたという。私たちはやはり、物語に飢えているのだと思う。ねぇ次はどうなるの? そんなふうに恋い焦がれる物語を待っている。

 最終回のテーマは「愛って何ですか」。春田と牧と部長、衝撃の結末に向かう。OL、ときめく時間を、ありがとう!(作家・北原みのり

AERA 6月4日号

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