そのスルガ銀がシェアハウスへの融資に積極的だったことが、明らかになってきた。

 静岡県沼津市に本店を置くスルガ銀は、地銀の中でも異色の存在だ。全国に133店舗を構え、個人向けローンや不動産融資に注力して収益を向上。メガバンク並みの高給を誇り、金融庁の森信親長官が昨年5月の講演で名前を挙げて高評価したことも話題になった。

 複数の関係者によれば、スマート社とは2012年からの付き合いだ。当初は中古ワンルームに2段ベッドを詰め込み、5年の「家賃保証」をつけて売り出した。会社員を誘い、スルガ銀がお金を貸すビジネスモデルはこの頃から育まれていた。

 13年にスマート社は国土交通省からマンション・シェアハウスの違法性を指摘され、土地を仕入れて法令上の「寄宿舎」を建てて売るビジネスに転換。融資額は億単位に膨らみ、賃料保証も30年に延びたが、スルガ銀は「融資役」を担い続けた。銀行の支店内でシェアハウス投資のセミナーを開くこともあったという。

 スマート社のシェアハウスは17年末までに計約1千棟、約700人の顧客を集めた。類似業者も次々参入し、それぞれが数十~100棟ほど物件を売りさばいたが、多くは年明けまでに行き詰まった。大半のオーナーがスルガ銀で億単位の金を借りており、返済猶予などの交渉をするうち、貯蓄や年収を偽った融資資料が次々と発覚。金融庁も銀行法にもとづく報告徴求命令を出し、詳しい事情の説明を求めている。

 会社員らを勧誘した不動産業者からは「スルガ銀の行員に勧められてシェアハウスを売り始めた」「行員からスマート社を紹介された」といった証言も聞かれる。スルガ銀は取材に「(詳細は)把握していないが、現在調査を行っている」と回答した。

 ブーム拡大の一翼を担った銀行として、不正行為がこれほど横行した理由や責任の所在について明らかにすべきだ。(朝日新聞記者・藤田知也)

AERA AERA 2018年4月9日号

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