
「死者の日」というお祭りをご存じだろうか。メキシコでいまも続く故人の魂を迎える祭礼で、日本で言えば「お盆」。でも、飾りつけはカラフルかつポップで、ハロウィーンと見紛うほどだ。このお祭りは写真家の蜷川実花を魅了し、ディズニー最新作の題材になった。
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死者を悼む祭壇にカラフルでポップな花々。親族なのだろうか。ポーズをとる少女は、骸骨メイクに骸骨ファッションで決めている。
悲しめばいいのか楽しめばいいのか、一瞬面くらってしまうこの写真。蜷川実花がメキシコの「死者の日」を捉えたものだ。「死者の日」は、毎年10月31日から11月2日までの3日間、メキシコ各地で行われる、故人の魂を迎える祭礼行事。年に一度、故人が家族のもとに戻り、時間を共にするとされる祝祭の日だ。日本で言えば「お盆」のようなものだろう。
20年ほど前に「死者の日」を知ったという蜷川。2016年、ついに現地を訪ねて祝祭をカメラに収めた。そして、ディズニーが近く公開するピクサーの最新作で、3月4日に米アカデミー賞長編アニメーション賞と主題歌賞を受賞した「リメンバー・ミー」の題材も、同じ「死者の日」──。
偶然とはいえ、この祝祭の何が、ディズニーと蜷川のクリエイティビティーを刺激したのか。
「リメンバー・ミー」の監督、リー・アンクリッチは言う。
「とにかく美しくて、色彩豊か。典型的な死のイメージが、花や彩りといった生とミックスされている。とてもユニークでほかの国では見られない。最初に興味を持ったのは、そこなんです」
メキシコと隣り合うアメリカでも、「死者の日」の意味をはっきりと理解している人は少ないという。時期的にハロウィーンと近いこともあり、“メキシコ版ハロウィーン”だと思われている節もあるのだとか。
「『そうではないんだよ』というところを世界の人々に知ってほしい。それも、この映画をつくった動機です」