この3.6%という保菌率は昔からなのか、それとも最近なのか。「両方の可能性があると思います」と梅田研究員は言う。今後については「これら感染したネコを介して広がっていく可能性はあるでしょう」。研究者たちは「感染による死亡例は起きてほしくなかったが、海外で事例があることを考えると、日本で起きてもおかしくないとは思っていた」と口を揃える。

 とはいっても、むやみに怖がる必要もないだろう。日本では約546万世帯がネコを飼っている。イヌは約722万世帯。これだけの人々が飼っていて、17年間で感染例の報告が25件ということは、普通に考えれば「めったにない病気」である。もちろん報告されていない症例もあるだろうし、今回の通知で情報が集まり件数が増えるかもしれない。だとしても、「ネコから感染する殺人細菌が蔓延中」などと理解するのは無理だろう。

 では16年の死亡例は、それまでの感染例と何が違っていたのか。「治療が遅れてしまったということです」と厚労省結核感染症課は説明する。「もう少し早く受診していたら助かっていたと推測されます」

 厚労省や研究者たちが推奨する予防法は、動物との過度な触れ合いを避ける、動物に触った後には手を洗う、具合が悪そうな動物は早めに獣医師に診せる、といったごく常識的なことである。そうすれば、ほかの動物由来感染症も防ぐことができる。

 梅田研究員は「今回のことが契機になって、こうした病気を知ってもらい、注意していただければと思います」と話す。(サイエンスライター・粥川準二)

AERA 2018年2月5日号

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