それで思い当たったのが「ニコ生(ニコニコ生放送)」カルチャーに似てるなってこと。実は以前、モーリーチャンネルっていうニコ生配信をやってたんですが、数カ月前にやめたんです。毎回ゲストを呼んで、主に政治的な話題を配信。視聴者はコメントを書き込むんですが、そこでミソジニー(女性嫌悪)が起き始めた。女性ゲストの意見に同意できるときは「美魔女だね」。同意できないときは「黙れババア!」。でも男性ゲストには起きないんです。仮に論破されても匿名である以上は傷つかない。揚げ足取っても、自分で調べて対案を出すことはしない。

 あまりにも手軽に手に入る情報。似たような考えの人ばかりと付き合うSNS。得たものを吸収して経験や感情と照らし合わせるという思考プロセスがどんどん省かれている気がします。そうやってソーシャルメディアに費やした時間は、何かを実体験するチャンスをロスしているだけ。人・モノ・コトに向き合う「わずらわしさ」を引き受けて、傷つくことを恐れずに使えば、インターネットにはまだまだできることがたくさんあるはずだと、思うのですが……。(構成/ライター・浅野裕見子)

AERA 2017年10月30日号

暮らしとモノ班 for promotion
2024年の『このミス』大賞作品は?あの映像化人気シリーズも受賞作品って知ってた?