●6割の銀行でノルマ化

 銀行業界も春以降、事業の見直し策を打ち出してきた。収入証明書を消費者金融と同様にきちんと確認する、広告表現で「収入証明不要」「貸金業法適用外」などの宣伝をやめる、テレビCMは消費者金融の規制に合わせて放送回数を減らし、子どもの目に触れやすい時間帯は自粛する、などだ。9月には、年内に利用者の意識調査を始め、全国銀行協会で専用相談窓口をつくるほか、本人や家族の申告でお金を借りられなくする仕組みも導入すると発表した。

 だが、これまで収入証明書をよく確かめずに多額のお金を貸していたこと自体が驚きだ。行き過ぎた広告を控え、利用者の実態把握に努めるのは大いに結構だが、それだけでは消費者保護の目的でつくられた貸金業法を「骨抜き」にしている現状は変えられない。

 というのも、本丸となる「年収の3分の1超の貸し付け」は今も必死に守ろうとしている。全銀協会長の平野信行・三菱UFJフィナンシャル・グループ社長は9月14日の記者会見で「(借り入れが年収の3分の1を超えても)返済できるケースがあるのは事実。そこは大事にしたい」と語り、カードローンによる年収の3分の1超の貸し付けを続けていく姿勢を鮮明にした。

 朝日新聞の独自調査では、銀行の約6割はカードローンでの融資拡大の数値目標を設けたり、支店や行員の業績評価の対象にしたりしている。ノルマ達成のため、融資先企業の従業員にカードをつくらせたり、借金を抱える人に新たなカードを勧めたりする例もある。これでは銀行業界は消費者の保護を無視し、ただ儲けるために多額の貸し付けを守ろうとしていると疑われても仕方がない。

 このままでは批判や懸念が収まらないとみて、金融庁も9月、カードローンに的を絞った立ち入り検査に動きだした。守るべきは銀行の利益か、消費者の保護か。答えははっきりしているはずだ。

(朝日新聞経済部・藤田知也)

AERA 2017年10月2日号

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