●量的拡大より質の強化

 アマゾンは15年9月からプライム会員向けに映画やドラマが見放題の「アマゾン・プライム・ビデオ」も始めたが、業界トップとして迎え撃つのが、NTTドコモとエイベックス通信放送が運営する「dTV」だ。ドコモのモバイルの販売網と顧客データの活用で、月額500円(税別)の低料金と豊富なコンテンツ提供を両立させてきた。

 アマゾン・プライム・ビデオは1カ月325円(税込み)と国内の有料動画サービスで最安値だが、コンテンツは約1万2千本(推定)と約12万本を誇るdTVの10分の1。dTVは会員数でも、実質的なサービス開始から5年で約470万人(17年3月時点)と国内最多だ。ドコモの山脇晋治デジタルコンテンツサービス担当部長は言う。

「コンテンツは数を増やすよりも、ユーザーが見たい作品をそろえることに注力している。また、その作品を見たい人に的確に届けるレコメンド機能やインターフェースの構築に力を入れています」

 コンテンツの調達には膨大なコストがかかる。会員が「本当に見たい作品」に絞るほうが費用対効果が高く、会員基盤の強化にもつながる。

「急成長の後は、量的拡大よりも質の強化が重要。市場、顧客データも積み上がっており、レコメンドの精度も飛躍的に向上した」(山脇さん)

 アマゾンは国内のプライム会員数を公表していないが、推定で800万人。半数がプライム・ビデオを使用すれば、一気にdTVに迫る。

「アマゾンの動きは注視するが、われわれが目指す『質の強化』という軸がぶれることはない」(山脇さん)

(編集部・作田裕史)

AERA 2017年7月24日号

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