親の看取りは誰しもが経験するもの。しかし、ゆっくりと最期のお別れをすることができなかったと、後悔する人は多い。まだまだ元気だからと、話し合わずにいると、その日は急にやってくる。お墓のこと、相続のこと、延命措置のこと、そろそろ話し合ってみませんか? AERA 2017年7月10日号では「後悔しない親との別れ」を大特集。
親の死を乗り越え、受け入れ、立ち直る看取りを経験した著名人に、親の死との向き合い方、実務上で苦労したことなどについて聞いた。今回は、フリーアナウンサーの辻よしなりさんです。
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プロレス中継やバラエティー番組などで活躍する辻さんが、父・博さんを見送ったのは2013年7月のこと。仕事一筋で、亡くなる2年ほど前まで役員として働き続けた博さん。若いころはスポーツマンだったというが、70代に入って肺気腫を患い、高濃度酸素が手放せなくなった。
「本人は『大好きな鍋が食べられなくなったのは誤算だった』なんて言ってました。ほら、酸素ボンベのそばで火を使うと危険でしょ」
だが、事態は笑い話では済まなくなる。博さんに肝細胞がんが見つかったのだ。
「肺気腫のせいで、あらゆる臓器が酸欠状態だったんです。ラジオ波手術でがんを切除しようにも、麻酔にもリスクがあった」