レズビアン、ゲイバイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字をとってLGBT。性的マイノリティーを表すために生まれ、定着しつつある言葉だ。たしかに一定の理解は進んだ。だが、LGBTとひとくくりにすることで、塗りつぶされてしまった「個」や思いがあるのではないか。性的マジョリティー側は「わかったような気持ち」になっているだけではないのか。AERA6月12号の特集は「LGBTフレンドリーという幻想」。虹色の輝きの影で見落とされがちな、LGBTの現実に迫る。
都市部に比べ、地方ではまだまだLGBTに対する風当たりは強い。しかし、近年、先進的な取り組みを行う地方都市も増えているという―。
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岡山市が本社のアパレルメーカー、ストライプインターナショナルは2016年に「LGBTプロジェクト」を立ち上げた。ダイバーシティ推進室室長代理の二宮朋子さんは、会社がLGBTを含めたダイバーシティーへの理解を深めることで入社希望者が増えたと語る。
「特に地方はLGBTにとってはまだ暮らしやすい環境ではないことも多いですが、当社だと働きやすいと思う従業員も増えているようです」
都市部に比べ、地方のLGBTに対する環境は必ずしも整ってはいない。岡山を含む中国地方ではこれまで「東京レインボープライド」のような大きなLGBTイベントが開催されておらず、ストライプ社が今年、東京レインボープライドで岡山へのメッセージを募集したところ、共感のメッセージが多数寄せられた。
一方、パートナーシップ制度を那覇市や札幌市が導入したように先進的な取り組みをする地方都市も増えている。昨年沖縄に移住しLGBT啓発活動を行う「レインボーハートプロジェクトokinawa」代表の竹内清文さん(40)は、「東京でも活動をしていましたが、前例や調整に時間を取られて動きづらかった。沖縄や自分の地元である岡山のほうが自治体が小さいぶん動きが速い」と期待を寄せる。熊本県で啓発活動に取り組む今坂洋志さん(64)は「地方で講演会をすると、最初は嫌悪感丸出しだった聴衆が最後には『これからは接し方を変える』と言ってくれる。正しい情報を伝えていくことで地方は確実に変わる」とも語る。(編集部・福井洋平)
※AERA 2017年6月12日号