ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中。
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ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中。
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 経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。

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 トランプ大統領が就任し、ハネムーンピリオドと言われる100日が終わります。これまでのトランプ大統領の仕事ぶりを採点すると0点。ナッシングというしかありません。要するに何もしてない。イスラム教国からの入国禁止令は裁判所に差し止められ、無駄だと言い続けたオバマケアの廃止にも失敗。結局やったことと言えば娘の事業を追いだしたデパート(ノードストローム)に文句を言ったことと、シリアにミサイルをぶっ放したことくらい。

 例えば、2009年に大統領になったオバマ氏は、2月17日に経済を活性化する米国再生・再投資法を議会に通しました。7872億ドルの公共投資を盛り込んだ法律(!!)を、上院で野党共和党のフィリバスター(議事妨害)を防ぐ60議席に満たない不利な情勢下で通したのです(一方トランプ政権は上下院とも過半数を持っていますが……)。

 また、リーマン・ショックで金融市場が崩壊寸前となる中、共和党人脈にもかかわらず、ローレンス・サマーズ氏を国家経済会議議長に、ティモシー・ガイトナー氏を財務長官に指名し、金融安定化策を2月10日に発表しました。内容は、(1)大手銀行に対する厳格な資産査定と追加資本注入、(2)官民による最大1兆ドルの不良債権買い取りファンドの創設が柱で、特に(2)は、3月23日には政府出資と連邦預金保険公社の融資保証が組み合わされた内容の詳細プログラムが公表され、これによって究極の米国売りを水際で回避しました。金融機関は今や見事に再生しています。

 オバマケアについては、これも2月4日にはオバマ大統領が児童健康保険プログラム拡充法案に署名し、さっさとワーキングチームをスタートさせていますね。

 外交がダメと散々コケにされたオバマ大統領ですが、公約通り対ロ融和政策を実現すべく、2月7日には、バイデン副大統領がミュンヘンで演説し、対ロ融和姿勢を表明、さらには3月6日にはクリントン国務長官がロシアのラブロフ外相と会談し、新たな核軍縮条約の年内合意を目指すことが決まりました。

 一方、トランプ政権は先日やっとティラーソン国務長官がロシアに行きましたが、「米ロ関係は最悪だ」というコメントを出す始末。おい、何やってんだ!という声がアメリカでは極めて大きいのです。

AERA 2017年5月1-8日合併号