「僕の映画づくりの情熱は声なきものに声を与えることにある」
とウィリアムズ。だからこそ、「オーウェンの視点」から物語世界を描くことに心を砕き、彼が伝記のように紡ぐ物語とスケッチをアニメ化して織り交ぜた。オーウェンが愛するのは、主役ではなく脇役のキャラクターたち。彼はアニメ映画を通じて、「すべての人が重要だ」というメッセージも学んでいた。
●幻の受賞スピーチ
大統領選後の米国では「はみ出し者」に一層厳しい現実が突きつけられている。監督は言う。
「もし、この映画がアカデミー賞を受賞したら、受賞スピーチでトランプ大統領に、『障がいがある人のモノマネをしないでくれ、彼らに対して寛容さと受容の精神を持ってほしい』と促すつもりでした」
ささくれ立った社会だからこそ、オーウェンのようなおおらかな視点が欠かせない。
(ライター・古川雅子)
※AERA 2017年4月10日号