経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。
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日米首脳会談を褒めて〈続く〉と書いておきながら(2月27日号)、続きを書いていないことに気がつきました。その間、先日のトランプ大統領の議会演説をポジティブに評価する声があちこちから上がってきています。やるときはやるとか、さすが一流のビジネスマンとか、手のひらを返したように突然言い始めているわけです。
しかし、私はむしろ、この人マジでヤバいと思い始めています。1月20日に大統領に就任してから、この期に及んで局長級の人事はほとんど決まっておらず、フリン大統領補佐官は辞任に追い込まれました。矢継ぎ早に大統領令にサインをしていることを実行力があると言っている評論家がいましたが、サインだけなら犬でもできます。彼はこれまでに何か実行しましたか?強いて言えば7カ国からの入国禁止は実行されましたが、裁判所に違法とストップさせられた代物。そして、新しく完璧な移民政策を発表すると言い、何週間も引き延ばした揚げ句、出てきたのは「イラクを除外し、アメリカの永住権やビザを持っている人の入国は認める」という内容です。そんなの当たり前でしょ!なんで前の大統領令の時に除外しておかないんかい!と突っ込みたくなる。
え、まだ就任から1カ月ちょっとでしょ、なんてのんきなことは言うべからず。2008年、金融危機真っただ中で大統領に当選したオバマ大統領は09年1月20日就任後、2月17日には米国再生・再投資法案を議会に通し、選挙期間中の公約を早速実行しました。上院の議席数が60に届いておらず、野党共和党のフィリバスター(議事妨害)を阻止できない中での採決です。
その直前の2月10日には荒れに荒れていた金融市場を救うべく、金融安定化策を発表。金融機関への審査厳格化と官民による不良債権の買い取りファンドを開設し、政府出資を入れ、融資保証をすることを決定しました。取り仕切ったのが、ローレンス・サマーズ国家経済会議委員長とティモシー・ガイトナー財務長官だったこともあり、金融市場は正常化に向かいます。これぞ「仕事師」。
それに比べ……このレベルの低さは何ですか??娘の商品がデパートから締め出されたとか言って文句をツイートしてる場合じゃないだろ、とマジで思いますけどね~。
※AERA 2017年3月20日号