●死産の原因を追究し 新たな命を守る
13年に第2子を妊娠27週で死産した横浜市の女性(36)は退院の際、医師から死産の原因は「不明」と説明された。
死産後の1カ月健診までに関連の書物を読みあさり、調べてきたことや疑問を医師にぶつけたが、納得できる説明はなく、帰り際に「どんなに時間がかかっても胎盤の病理検査結果を知らせてほしい」と伝えたところ、医師はごそごそと机の引き出しから結果票を取り出した。そこには「絨毛膜羊膜炎による胎盤機能低下」とあった。
原因は私にあったのか──。自分を責めた。
「さまざまな症状が出ていたのに私は入院すらしなかった。私も担当医も知識と経験が不足していた。もし予見できれば有効な治療があったかもしれないと、今でも自分を責め続けています」
その後、次の妊娠に向け、別の医療機関で妊娠前外来を受診。当時の処置や、感染症についてしっかり学んだうえで、第3子の娘を出産した。
冒頭の女性も死産の原因を「不明」では終わらせなかった。
別の医師にセカンドオピニオンを求めて再検査し、不育症の疑いが出た。専門病院で検査を受け、死産から半年後、不育症のひとつで、胎盤に血栓ができやすく流産・死産を引き起こす「抗リン脂質抗体症候群」と判明した。
死産後に流産も経験し、14年に第3子を妊娠。血栓ができないよう、毎日2回自分でヘパリン注射を打つ。出産までに約500本だ。大の注射嫌いだったが、「これで赤ちゃんに会えるなら」と思うと頑張れた。切迫流産、切迫早産、羊膜下血腫での緊急入院を経て、無事に男の子を出産。16年にも流産を経験し、現在第5子を妊娠中で、今も日に2回の自己注射を欠かさない。
「赤ちゃんの命を守れるのは母親だけ。それを教えてくれたのは彩衣里です。誇りを持って未来に生かしていきたい」
女性はこうした経験をブログ「天国からの1週間」で発信し続けている。
●臍帯血保管で悩む妊婦 納得した決断が救いに
賛否両論があり、妊婦たちを悩ませるものもある。それが臍帯血(さいたいけつ)の保管だ。
臍帯血の保管先は公的バンクと私的バンクがあり、公的バンクに寄付した臍帯血は白血病など血液の病気を患っている第三者に提供される。一方、私的バンクは本人の将来の病気や障害に備えて保管するもので、採取や保管に10年間で二十数万円ほどかかる。私的バンクについては、過去に日本産婦人科医会母子保健部などの団体が問題点を指摘しており、高額で保管しても使用する可能性がとても低いことや、過去に保管業者の経営破綻が起きたこと、品質管理への疑問も呈されている。