ロンドンのトリニティ・ラバン・コンサヴァトワール大学に留学。国籍、障がいのあるなしにかかわらず、ダンスを通して身体を触れ合わせてコミュニケーションを取るコミュニティーダンスを学んだ。

 英国のダンスカンパニーCandocoでプロとして活動し始めたのは2003年。その3年後、ある振付家との出会いが運命を変える。かつて英ロイヤルバレエ団のソリストも務めたジョナサン・バローズさんだった。

 南村さんが音楽を使わないでリズムと踊りだけで作った作品を見て、彼は「あなたは振付家になるべきだ」と言った。

「この一言で、聴こえないことを生かすことは、聴こえない世界からとらえた音や音楽を表現することだと気づいたのです」(南村さん)

●「異なること」が面白い

 ここから南村さんは、「視覚的な音、音楽とは何か」を追究。音楽や絵画、デジタルなど異なる分野のアーティストとの共同制作を通じ、多様な表現を開拓している。

「異なるからこそ、そこに面白さがあり、そこから新たに生まれるものがあります。その『異』を生かして何ができるか、何を生み出すことができるか。そういう時代が来ています」(同)

 20年にパラリンピックが開かれる日本。しかし、ほとんどの人々が、障がいのある人と仕事をしたことがないのではないだろうか。

 12年のロンドン・パラリンピックの開会式では、彼女と同じように聴覚に障がいがあるジェニー・シーレイさんが共同ディレクターを務めた。

「これからの日本でも、障がいのある人と仕事をする意義を考える時に来ていると思います」と南村さんは話す。

 障がい者を「異なる視点を持つ者」として私たちがとらえられるようになったとき、日本はもっと住みやすい社会になるに違いない。(写真家・袴田由美子)

AERA 2016年12月19日号

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